通信教育は、ただ勉強を教えてくれるだけではありませんでした。課題を提出した時の先生のコメント。の他にも、何か悩み事があった時に、担当の先生に相談するための専用の用紙もありました。
通信教育にも色々な種類がありますが、わたしがやっていたような子どもを相手にした通信教育は、本当に大変だと思います。先生の方が……。子どもの場合は、親にいえない事や友達にいえない事があっても顔の見えない相手や、年上の大人の先生だとそのような秘密や隠し事を素直に吐いてしまうものです。しかも、子ども特有の残酷なまでの素直さで……。今思うと、かなり辛らつな事や、かなりどうでも良い事を先生に相談していたような気がします。しかも、自分が一番偉いと勘違いした文章で……。先生も相当苦労したのではないかと、謝りたいくらいです。
通信教育の先生は、それでも子ども心を汲み取った大人の回答をしてくれました。わたしの担当となった先生は、女性のようでとても優しい方でした。当時、ちょっと特殊でスパルタ教育に近い環境にいたわたしは、家の中ではかなり居心地の悪い思いをしていました。当然親にいう事はできず、友達もおらず、先生だけが大切な相談相手でした。先生は、そんなわたしを子ども扱いせず、それでも子どもにわかりやすい言葉を使い、励まし諭してくれました。
通信教育というと勉強だけを教えるものだと思われがちですが、このようにして、親以外の大人の人間と接する機会を作ってくれます。"手紙"というツールは今ではほとんど使われる事がないものですが、時間を掛けてやりとりをする事により、返事が来るまでの間に、自分の中である程度自分の気持ちを昇華する事ができます。また、文字を書いているうちに、自分の気持ちが整理され、何が問題で何をどうしたいのか、何をどうすればよいのか、という事が見えてくる事もあります。
通信教育は、このような時間も与えてくれました。今、このようにして文章を書く仕事についている事も、当時、国語が嫌いだったにも関わらずある程度の読解力や文章力があったのも、先生に手紙を書く事ができたからかもしれません。また、手紙のやり取りをする事により、一方的ではないコミュニケーションの方法を学ぶ事ができたような気がします。